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命の番人―難病の弟を救うため最先端医療に挑んだ男

ジョナサン ワイナー
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命の番人―難病の弟を救うため最先端医療に挑んだ男の詳細
  • おすすめ度:まだ評価されていません。
  • 出版社:早川書房
病気別書の人気トップ10
命の番人―難病の弟を救うため最先端医療に挑んだ男のカスタマーレビュー

「2つの物語の同居を意識して読むべき本」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2007-07-14

 ALSの病状がどのように進行するか、少しでも知りたいと考え、その部分を中心に本書を読みました。例えば痔疾といったものもその進行の経過の中で発生するといったことを知ることができましたが、病状に関する記述は断片的でした。そしてアメリカの遺伝子治療の状況、ALSの治療の困難さを本書で再確認しました。
 本書はALSを発症した家族の物語を中心に、著者の進行性核上性麻痺(PSP)を発症した母に関する物語の2つが並行して語られることから、常に「今はどちらの話か」ということを意識して読む必要があります。これが注意力を削ぎ、読みにくさの一因ともなっています。母の病気は著者として書きたいものであることはわかりますが、それは別のドキュメンタリー小説として省いたら、より力を持つ作品になったと思います。

「最先端医療に対する問題提起」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2006-10-21

 MITで高等教育を受けた兄・ジェイミーに対し、アカデミックな分野は自分には合わないと、大工になった弟・スティーヴン。生き方は違うが大変仲の良い兄弟で、難病にかかった弟をなんとか救おうと、兄は持てる自己の全ての能力、200%のエネルギー注ぎ込み、東奔西走する。弟に残された時間の少なさを思い、なりふり構わず突き進み、家庭生活さえ犠牲にしてしまう兄の姿には心が痛むが、当事者の弟は、兄に感謝しつつも自己の運命を受け入れ、結婚し子供に恵まれている。
 私たちはこれまでになく「命とは何か」といった、哲学的な命題に直面している。医学・科学が発達したがゆえに、これまでは助けられなかった命を助ける事ができ、望めなかった子供に恵まれる可能性ができたからだ。臓器移植、代理母の問題は最たるものだろう。現代の最先端医療をどう利用するかはまだ結論が出ておらず、それを規制しようとする側は、倫理上の問題が解決できていないためとするが、難病に冒された当事者や家族にしてみれば、まさしく生き死にの問題であって、悠長な倫理論争をしている時間はない。ジェイミーの挑戦は、病気のみならず、この「倫理」への挑戦でもあがゆえに、心を揺さぶられる。
 
 

「いろいろ考えさせられる本」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2006-09-13

 家族が死の宣告にも等しい難病にかかったことを知ったら、自分だったらどうするか。本書の主人公のジェイミーのように、すべてをなげうって弟の病気の治療法探しにかけることができるだろうか。まず、そんなことを真剣に考えた。

 ALSになった弟と、その治療法を開発するために財団をつくった兄。取材をするうちに、自分の母の病気が判明し客観的に兄弟を見られなくなっていく著者。彼らの物語は、それだけでも複雑だ。しかし、ここに生命倫理の問題が絡んでくる。とくに、財団のために募金をつのっている兄が、この治療法でお金を儲けようとしてはいけないのかと悩む場面。弟の病気をダシにして大金を稼ごうとするのはひどいと思うこともできるだろうが、だが、大きな製薬会社と組んで治療法の開発ができれば、開発までの時間が劇的に短縮できるかもしれない。弟の病気を治したうえに、金持ちになれるんだったらそのほうがいいのではないだろうか……。

 最後の章での弟の明るい姿はいくらかの救いだったが、いろいろなことを考えさせられた。

「翻訳の問題が大きいがテーマが読ませる」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2006-08-16

読む事が苦痛に感じる事さえあるくらい、翻訳の問題が大きいと思います。もしかしたら、別人が翻訳したのでは?と思われるくらい語調のかわる場所があったり、この翻訳で出版した出版社の責任もあるでしょう。
それでも何とか読ませたのは、テーマです。原題は聖書由来の「弟の番人」(カインとアベルの物語)です。これが含蓄のある内容を物語っています。翻訳の問題はあるものの、現代人が新たに手にする苦悩がもう一つのテーマでしょう。
著者の実母も難病になり、人格が壊れてゆくのを同時進行で体験し苦悩します。ライターとしてこの兄弟と接しながら、同じ難病を持つ家族として心理的に寄り添い、入り込んだり、疑問を持ったり拒否的になったり、それぞれの局面でライターの心のうちが明かされます。現代医療の恩恵とともに苦悩を背負う事になるという現代の「原罪」を提示してくれます。

「最初は読みづらいですが・・・」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2006-07-17

翻訳が悪いのか、原文が読みづらいのか何回か読み返さなければ頭に文章が入ってこなかったりします。
内容は、ALSという筋肉が萎縮していって最後には窒息死する病気になってしまった弟を救おうと、兄やその他の家族が一緒になって周囲の助けを得ながら遺伝子治療を研究する財団を作ったりして治療を進めようとしていく内容です。
この本の著者も母親がレビー小異体(?)という病気にかかっており、取材を進めていく過程で遺伝子治療に母親を救う望みをかけたり、遺伝子治療に疑心暗鬼になったりしていきます。

ALS治療をめぐるひとつの家族や周囲の人間の物語だけではなく、著者自身の母親の病気のことにもふれつつ話が進んでいます。
これが、現在(少なくとも原著の書かれた時期)の科学では望み薄と言わざるを得ない各種病気の遺伝子治療にすべての希望をかけている人間の気持ちを少しは理解させてくれます。

といっても感情的な内容の本ではなく、自己の過去を見つめなおしている客観性を保った内容の本です。

ただ、冒頭にも書きましたが少し読みづらいです。
すらすらと読めるには、遺伝子治療や著者の文化圏のバックグラウンドに対する深い理解があればいいのではないかと思います。